会員:香川義熙
 

第1回「露出」について
第2回「光の当て方」について
第3回「ピントと絞り」について

第4回「バック処理」について述べたいと思います。
 花の写真には、如何にバックを上手に処理するか・・・、花の背景を旨くつくろう事が必要です。記録写真でもアート写真でも同じですが、特に後者の場合は花を見せる決め手になるでしょう。故秋山庄太郎先生もお弟子さんに、1m足らずの数枚のバック紙を持たせていたのを見たことがあります。草花などを撮る際には素早くそれに合ったバック紙を出させ、花の後ろに立てて撮っておられました。ひまわりや蓮の花、コスモスなどは屋外の花で空や雲をバックに写せるが、ランは室内撮影が殆どです。後方の棚や窓枠が写り込んだのでは味けしです。常に使いたいのでバック紙や黒い布を用意しておきたいものです。
 蘭友会の入賞花撮影には、漆黒の繻子布の黒バックを使用しています。趣味の皆さんランの花の色が正しく写っていないのは不満な筈です。黒地の背景で写すと花色は最も正確に出やすいのです。もう一つの利点は影が映らないことです。

 
 
Den. obtusisepalum 赤系(オレンジ色)もDen. sp.の白色の花も葉の緑もOKでしょう。
     
 第1回の「露出」で述べたように、黒バックは−補正に注意さえすれば大変に撮りやすい。しかし黒バックばかりでは飽きてくる。時には雰囲気を変えて撮ってみたい。
 そこで考えられるのは、同じ植物の葉や花などを利用するごく自然な背景を演出する方法です。
 
   
Restrepia filamentosa
 
C.Mini Purple
 
Den. hercoglossum
       
 この写真は、或る貸し温室の中でバックへ、白色の大輪カトレアを配してぼかしてみました。右側のデンドロビュームはセロジネの葉っぱをバックに置きました。貸し温室のように広いスペースがあると、光の取り込みは勿論、撮りたい花のバックに好みのものを置いてセットができます。三宅さんがいつもこの手法で上手く写されますね。
 いま一つは上記秋山先生の例で述べた人工バックです、量販写真材料店でも売っています。好みの模様で自作もできます。私は自ら写した写真で作っています。
 自作のバック紙を背景にして写した例ですが、余り知られていませんが、バックによって花の色が変わることです。例をお見せしましょう。同じ場所で、同じ照明下で、やや撮影レベルを変えて写しました。

 

   
 
 これは、Porroglossum mnscosumを極端に違ったバックで撮ったものです。気が付くのはバック色によって花の色も影響を受けることです。この場合背景が広くて花が小さいから極端ですが、こういう事もあるのです。
 花の色が正確に写せるのは黒バックなのです。背景紙もこのように極端だと少々抵抗があります。
下記に私手製の、多少手の込んだ背景紙をお目に掛けます。(アマチュアの撮影には適当な遊びです)
 
 
Sigmatostalix picta(雁渡る)F:11 補正0
 
Paph. (開花) F:5.6 補正 ミ1. 1/3
     
この背景紙は私が「或る日の茜空」と「植物園の大羊歯」を撮影して作ってあるものです。
 
 
Den. lowii F:11 補正 +1/3
 
Paph. Olivia F:6.3 補正−1
     
 背景紙の距離の関係で、雲がやや崩れて写りましたが、いわし雲のバック紙です。右はバック紙を何枚かランダムに重ねて暗くしたもので、ダークなまだら模様を作ってみました。背景紙と被写体の花との距離も大切です、あまり近づけないことが肝要です。被写体である花やカメラの陰が写り込んだのでは台無しです。好みのものを何枚か用意しておくといいですね。背景が何時でもOKならば撮影も手軽に始められる。
 しかし、先の温室内で自然の背景を設えて撮影したものと、創作の背景紙の前で撮影したものとでは自ずと違う。あくまで自然であるべきで前者が良い、作為的なバックは嫌いと言われる方もいらっしゃいます。これは好みの問題でどちらも賛成です。ここでは、こんな方法もあるとあれこれお伝えしたわけです。
(第4回)
 

ページトップへ

活動報告トップへ

トップページへ