Cycnoches pentadactylon
Cycnoches pentadactylon

ペルー、ブラジルに自生する着生種。
1841年にW. LobbがRio de Janeiroで発見し、1843年にJ.Lindleyが記載した。

種小名のpentadactylonは、penta-が「5」、dactylが「指」を、つまり「5本指の」を意味する。恐らく、形と大きさがほぼ同じセパルとペタルが5本の指を広げた形に似ていることに由来するものと思われる。
雌雄異花で、雄花の花茎は通常長さ15cm〜20cmほどの円筒形のバルブの頂部から生ずる。
花茎は下垂し、長さ30cm〜40cmほどに達し、多花を付ける。
雄花は花径約8cm、淡緑色で栗色の斑点と横縞斑が入る。 蕊柱が細長く、弓状をなし、長さ4〜4.5cm。



Cycnoches pentadactylon 雄花(栽培:松井紀夫)

雌花は肉厚で、花径7〜8cm黄白色で下半分に栗色の斑点が入る。
雄花とは別の直立して短い花茎に、雄花よりも大きく数花咲く。
稀に、同じ花茎の元に雌花先に雄花を咲かすこともある。
栽培は容易であるが、薄く大きな葉にハダニが付き易く、ハダニが付くとバルブの生長が著しく阻害されるので、防除に留意する。
冬季は落葉するので潅水を控える。
花期は夏から秋。



Cycnoches pentadactylon 雌花(写真提供:白石茂)

 Cycnoches属は1832年にJ. Lindleyが設立した。
属名はギリシャ語のkyknos(白鳥)とanchen(首)の2語からなり、雄花の細長く 弓状になる蕊柱に由来する。
細長い蕊柱と白いリップのコントラストが優雅な白鳥の姿を連想させることから、
Swan Orchid(白鳥蘭)と呼ばれることもある。
約12種が熱帯アメリカに自生する。chlorochilon, cooperi,peruvianum,lehmannii,loddigesiiなど雄花の花茎が下垂するものが多いが、haagiiのように雄花の花茎が直立するものもある。


Cycnoches chlorochilon (栽培:三宅八郎)

Cycnoches属はCatasetum属と近縁で、分布域も草姿も大変良く似ており、共に蘭科植物では数少ない雌雄異花であるが、Cycnochesは雄花の花茎がバルブの頂部の節から生ずる。
一方、Catasetumはバルブの基部から花茎を生ずる。
また、Catasetumは雄花の蕊柱の両側に触角状の突起があり、この突起に触れると花粉塊がはじけて飛ぶと言う特異な性質があるが、Cycnochesには蕊柱に突起は無く、従って花粉塊がはじけて飛ぶと言う特異な性質も無い。この二点で両属を区別することが出来る。
なお、Mormodes、Clowesiaも共にCycnoches、Catasetumの近縁であるが、いずれも両性花を生ずる点で異なっている。
                                     (記:松井紀夫)

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